復帰へのアプローチ

1.はじめに

少年野球

回復への原則は「回復する時間を作ってあげる事」です。「回復を待ってあげる」と表現した方が正しいかもしれません。 一般的にみられる子供の野球肘では、損傷してしまった部位に回復する(時間的な)余裕を作ってあげるのです。

成長期では、損傷部位は成長に伴い修復されながら成長していきます。 通常の範囲(程度)であれば、特別な事をしなくても修復され回復していくのです。 当然、早期であればダメージも少ないので、修復に必要な期間も短期間ですみます。 力学的ストレスが掛かった関節は、成長に伴い修復しようとします。せっかく修復しようとしていても、それ以上に負担を掛けていては修復が間に合いません。当然、悪化してしまいます。修復されるまで無理をしないで回復を待ってあげる事が基本事項です。

但し症状や程度、経過などによっては残念ながら手術が必要になる場合もあります。 手術が必要になるのは全体の数パーセントに過ぎませんが、関節ネズミの末期で遊離してしまいロッキングを起こしたり癒合しない場合や、内側障害で内側骨端核が完全離解し癒合しなかったり骨端核が反転(ひっくり返ってしまう)している場合には残念ながら手術に至る可能性が高まります。 投球フォームに原因がある場合、通院・加療などによって症状が改善しましても、フォームを改善しないままに投球を再開すれば症状が再発する可能性やその他のトラブルを引き起こす可能性が高いのは明白です。 いわゆる野球肘は11歳12歳頃に頻発しますが、痛みなどの症状を取るだけでは本当の意味での治療とは言えないと考えています。 やはり原因を追究して、その原因に対策を講じる(フォームに原因があればその要素を探し出し対策を立てる)事を行い、再発予防に努めるべきだと思います。

 

 

 

2-1. エコー(超音波診断装置)による、早期発見と定期的な状態の把握

エコー

当院では、野球肘の早期発見と定期的な状態の把握のために積極的にエコー(超音波診断装置)を使用しています。

野球肘ではエコーによる画像はその有用性が確認されています。画像検査には、レントゲン撮影(単純撮影)・MRI・CT・エコー(超音波)などがあり、それぞれ長所短所があります。

エコーでは骨も含めて、骨以外の組織(靭帯・軟骨・筋繊維など)も確認できます。 またレントゲンでは見つけにくい初期の離断性骨軟骨炎も描出可能(見つけ出す事が可能)です。 レントゲン撮影時に発生する放射線被曝も全くありません。MRIのように時間も掛かりません。関節を動かしながらのチェックも可能です。短時間で実施可能な事や被曝リスクも無い事などから、最初のチェック実施として有用です。

エコーのチェックによって病変が見つかった場合には、必要に応じてレントゲン撮影やMRIが必要になるケースがあります。その際には適切な専門医を紹介させて頂く事になります。
当院でのエコー実施時には内側のみに症状がある場合にも、外側のチェック(離断性骨軟骨炎の確認)も同時に実施させて頂いております事をご了解ください。

 

 

 

2-2. 専門医との連携

専門医との連携

症状や経過によっては、専門医を紹介させて頂く事も御座います。

外側の場合にはエコーによりわずかでも異常描出があれば、将来関節ネズミになってしまう危険性があるために、必ず専門医を紹介させて頂きます。

内側の場合は、エコーによる描出状態・ROM(可動域)・ストレス時インスタビリティ(不安定性)などによって判断させて頂きます。

また、あらかじめ専門医への受診をご希望されます場合には、お気軽にその旨お申し付け下さい。症状やお住まいの地域になどを考慮したうえで専門医をご紹介いたします。

 

 

 

2-3. 加療(治療)

加療(治療)

小児の投球障害では、不可逆的な状況に陥っていなければ治療の基本は「回復を待つ」事になります。

成長期には骨や関節は成長に伴い自然に修復されるのですが、無理をして投げ続けていると(投げ始めだけに痛むようなケースも含みます)成長に伴う修復が追いつかなくなってしまいます。 通常はむしろ壊されていくペースのほうが修復のペースよりも早くなってしまいます。 成長期の野球肘では治療の基本は「痛んだ関節に負担が掛かる事を避け、成長に伴う修復を行わせてあげる」事です。

ここで2つの大きな問題を掲げます。
その1.「修復の邪魔をしない事」
その2.「急に治るような特別な魔法のような方法は存在しない事」

マッサージや過度のストレッチは修復を妨げる危険性もありますので、実施には注意が必要です。

 

   

当院での代表的なメニュー

時期(タイミング)

主な内容

来院初期など

アイシング・テーピングなどに並行して前腕屈筋群の筋持久力トレーニング・ストレッチング。
ご希望に応じてLIPUS(オステオトロン)の実施。

その後の期間

シャドー(分習法での実施)・上投げ(MERでの肩関節外転角度の学習)・下投げ(小学生がやり辛い指の掛かりの学習)など。

復帰時期前後

シャドーなどによるフォーム練習など。

 

いずれのタイミングでも、コンディショニングメニューも並行実施となります。
上記はあくまでも代表例です。実施内容は個人毎・症状・程度などによって異なります。

また2010年月からLIPUS(オステオトロンⅣ)を導入しました。野球肘への応用使用が可能です。離断性骨軟骨炎の終末期・上腕骨内側骨端線離開など使用できない、または効果が期待できない病態もあります事を御理解ください。

 

 

2-4. 投球フォームのチェック及びアドバイス

投球フォーム

症状や経過によって、シャドーピッチングやボールを持ってのキャッチボールを行って頂きまして、フォームチェックやアドバイスも行っております。

来院当初でも症状が軽ければシャドーを行っていただきます。症状が強ければ、安静期間後にシャドーもしくはキャッチボールになります。
フォームに影響を及ぼす要素(主に肩関節&股関節の可動域・握力など)のチェックも行います。場合によってはビデオ撮影を行い、動作分析も行っております。

 

 

 

 

 

2-5.投球傷害リスクを減らすためのコンディショニングの指導、アドバイス

コンディショニング

例)
・正しい投動作実行を妨げる関節可動域ROMの改善。
・弱化したり硬くなったりしたインナーマッスルのトレーニング。
・鏡を見ながらのシャドー練習(分習法)。
・上投げ・下投げなどによるフォーム改善。
・ヴォーテックスによる投動作練習。
など